山下あやねのふじのくに武者修行 vol.1

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 大雨に台風、桜島…最近の鹿児島は自然の力にあらがえないカンジですが、一方。私は今富士山の見える家に住んでいます。6月に静岡県の芝居人と結婚し、居住地を移しました。新婚劇団山下として、観た芝居や日々のことを綴っていきたいと思います。

 この夏、夫の毎年恒例行事であるSCOT SUMMER SEASONのために、私も富山県を訪れた。演出家鈴木忠志が拠点を利賀に移して40年、SCOT創立から50周年という節目のシーズン、私にとっては初めての鈴木作品である。これまで恥ずかしながら古典戯曲に馴染みがなく、むしろ苦手意識すらあったが、今回の演目は多くが古典戯曲。直前にWikiであらすじを見てから観劇するような状態だった。詰まる所、古典戯曲モノの楽しみ方というのはオペラに近く、観客はそのストーリーを既に知っているという前提のもと、どのように演出するか、見せるかという部分を観るものなのだ。この「観客の予備知識」は、多国籍の俳優がそれぞれの言語でセリフを話すSCOTの作品では特に必要である。もちろん字幕は出る。しかし当たり前だが字幕ばかり見ているわけにもいかないのである。『リア王」では5か国語が入り混じった上演であったが、(あらすじさえ頭に入っていれば)不思議なことにそれほど違和感はない。それは、スズキメソッドが叩き込まれた俳優たちによる統一された身体使いのせいに他ならない。言うなれば「身体の共通言語」が、言語の違いを超えたということなのだろうと思った。

 そして個人的に興味深かったのが、鈴木忠志が何度となく繰り返す、利賀での作品創造の意図だ。人口が減り、このままでは消滅していくだけだった利賀村に、どうしたら人が呼べるのか。古いものが残る利賀村の良さを残すために、自ら移住し、利賀村でしか観られない世界的な作品を作ることで、この土地に貢献しようとしている。鈴木忠志は利賀で「世直し」をしていきたいと言うのである。継続の賜物ではあるのだが、芸術公園内の飲食コーナーには、地元の住民と思しきおばあちゃんたちがいたり、『世界の果てからこんにちは』の観客のうちいくらかは、鈴木忠志作品というよりは花火を楽しみに来ている人たちであったりした。SCOTは今やその作品ごとすっかり利賀の一部になっているのである。

 今年度国民文化祭の開催県である鹿児島県は、果たしてそのあと芸術や文化を自分たちの地域のものにできるのだろうか。一過性の祭りで終わることなく、芸術・文化を根付かせ、観客を育てることができるのだろうか。利賀も、最初から今のようであったはずはない。40年作品を作り続け世界的に評価もされているSCOTを肌で感じ、目で観て、自分の故郷に想いを馳せた利賀滞在であった。

山下あやね

 

山下あやね

鹿児島演劇協議会会員。6月に静岡の演劇人と結婚。
富士山の見える家で新婚生活を送りながら、今後は鹿演協静岡支局特派員として活動します。

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